「消費者金融を使う人は珍しいのか」「みんなはいくら借りているのか」と調べると、数字の違う調査がいくつも見つかります。 これは、消費者金融だけを数えた統計なのか、貸金業者全体を数えた統計なのか、現在残高がある人なのか、過去の利用経験者まで含むのかが統一されていないためです。 2026年5月末の信用情報統計では、貸金業法の対象となる借入れに残高がある人は1,090.4万人、1人あたりの平均残高は85.6万円でした。 ただし、これをそのまま「日本人の何割が消費者金融を利用している」「85.6万円までは借りてもよい」と読むことはできません。
では、利用者は全国で何人に一人なのでしょうか? 平均より借入残高が少なければ、安全と考えてよいのでしょうか? どちらも統計だけでは決まらず、分子と分母、対象業者、残高の分布を確認したうえで自分の返済計画へ戻す必要があります。
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| 知りたい数字 | 2026年5月末のJICC統計 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 登録人数 | 1,707.4万人 | 現在残高がない人も含む |
| 残高がある人数 | 1,090.4万人 | 消費者金融だけでなく、貸金業法の対象情報を登録する会員の合計 |
| 残高がある契約数 | 1,733.7万件 | 1人で複数契約を持つ場合がある |
| 残高総額 | 9兆3,349億円 | 調査時点の残高であり、年間の新規借入額ではない |
| 1人あたり残高 | 85.6万円 | 推奨額や上限額ではなく、残高総額を人数で割った平均 |
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「利用者の割合」は母集団を決めないと比較できない
消費者金融の利用率を一つの数字で示すには、まず分子と分母を決める必要があります。 分子の候補は「申込みをした人」「契約がある人」「現在借入残高がある人」「過去に利用したことがある人」の四つ。 分母も、総人口、18歳以上の人口、就業者、調査回答者などで結果が変わります。
日本信用情報機構の統計は、同機構へ登録された貸金業法対象情報を集計したものです。 JICCが説明する指定信用情報機関の仕組みによると、加盟する貸金業者には消費者金融会社だけでなく、クレジット会社なども含まれます。 したがって、残高あり人数を総人口で割っても「消費者金融会社を現在使っている人の全国比率」にはなりません。
アンケートも同じです。 日本貸金業協会の2024年度資金需要者等の借入意識や借入行動等に関する調査は、全国の18歳以上のインターネットモニターを対象にしています。 本調査では貸金業者からの借入経験者2,200人と借入未経験者550人などを分析していますが、これは借入経験の有無に応じて対象者を抽出した調査設計です。 抽出条件と回答者構成は同協会の2024年度調査報告書に掲載されています。 2,200人を2,750人で割った値を、そのまま全国の利用率として扱うことはできません。
割合を見るときは、次の式を先に言葉で埋めます。
計算式:割合 = 対象となる利用者 ÷ 対象となる集団 × 100
「いつの時点で」「どの借入れを」「どの人の中から数えたか」が書かれていない割合は、自分との比較材料にしないほうが安全です。
2026年5月末の残高あり人数は1,090.4万人
JICCの信用情報に関する統計では、2026年5月末時点で貸金業法対象情報の登録人数は1,707.4万人、そのうち残高がある人は1,090.4万人です。 残高がある契約は1,733.7万件なので、人数より契約数のほうが多くなっています。
この差から分かるのは、同じ人が複数の契約を持つ場合があることです。 一方、「1,090.4万人全員が消費者金融会社から借りている」「1,707.4万人全員が現在返済中」とは読めません。 登録人数には残高がない人も含まれ、集計対象は貸金業法対象情報だからです。
金融庁の貸金業関係資料にも別の集計があります。 2025年11月公表の貸金業関係資料集では、2025年3月末の貸金業者による消費者向け貸付残高を8兆4,874億円としています。 金額の時系列と集計単位は、同資料集の統計表に掲載。 これは信用情報機関の登録残高とは集計主体や定義が異なります。 同じ「残高」という語でも数字が一致しないときは、どちらかが誤りなのではなく、対象範囲を確かめます。
平均85.6万円が安全額ではない理由を計算例で確かめる
JICCの2026年5月末統計では、残高総額9兆3,349億円を残高あり人数1,090.4万人で割った1人あたり残高は85.6万円です。 平均は全体の規模をつかむ数字であり、個人の返済可能額を示す基準ではありません。
たとえば、残高10万円の人が4人、残高400万円の人が1人いるとします。
計算式:(10万円 × 4人 + 400万円)÷ 5人 = 88万円
平均は88万円ですが、5人中4人の残高は10万円です。 一部の大きな値に引き上げられるため、平均だけから「多くの人が85万円前後を借りている」とは判断できません。
さらに、借入額が同じでも負担は同じになりません。 毎月返済へ回せるお金、適用金利、返済期間、ほかの債務によって、完済までの利息と生活への影響が変わります。 確認すべきなのは他人の平均ではなく、返済後も家賃、公共料金、食費などを払えるかです。
借入件数別では一件の人が約62.6%を占める
JICCの2026年5月末統計を借入件数別に分けると、残高がある人の内訳が見えてきます。
| 借入件数 | 残高がある人数 | 全体に占める概算割合 | 1人あたり残高 |
|---|---|---|---|
| 1件 | 683.1万人 | 約62.6% | 66.3万円 |
| 2件 | 248.7万人 | 約22.8% | 100.6万円 |
| 3件 | 102.8万人 | 約9.4% | 127.2万円 |
| 4件 | 39.6万人 | 約3.6% | 152.5万円 |
| 5件以上 | 15.9万人 | 約1.5% | 239.4万円 |
割合は、各区分の人数を残高あり人数1,090.4万人で割り、小数第2位を四捨五入した概算です。 公表値の丸めにより合計は厳密に100%になりません。
1件の人は約62.6%で最多です。 また、借入件数が多い区分ほど1人あたり残高も大きく、1件の66.3万円に対し、5件以上では239.4万円です。 この関係は、複数社から借りれば必ず返済困難になるという意味ではありません。 ただし、新しい会社から借りて既存返済をつなぐ状態なら、平均との比較ではなく返済計画の見直しを優先すべき兆候です。
貸金業者からの借入れには、原則として年収の3分の1を超える新規貸付けを制限する総量規制があります。 制度の説明は金融庁の貸金業法Q&Aで確認できます。 3分の1は借りてよい目安ではなく、貸金業者側の貸付けを規制する上限です。
統計を自分の判断へ使うときは三点を確認する
利用実態の数字は、不安をあおる材料でも、借入れを正当化する材料でもありません。 次の三点をそろえると、自分に必要な判断へ近づきます。
- 統計の範囲を確認する 消費者金融だけか、貸金業者全体か、銀行も含むかを確かめます。
- 時点と状態を確認する 現在残高がある人か、契約者か、過去の経験者かを分けます。
- 平均を返済能力へ置き換えない 自分の毎月返済額、完済時期、利息総額、生活費への影響を計算します。
日本貸金業協会の調査結果は、借入れの目的や行動を知る資料として使えます。 2024年度調査報告書を読む前に置くのは、回答者の抽出条件と設問の対象。 そのうえで、自分と近い層の結果を見ます。
金融庁の資料で市場規模を追う場合は、表の定義にも目を通します。 貸金業関係資料集の統計表には、残高や業者数の時系列が掲載されています。 一つの数字だけを切り取らず、統計名、対象、日付を一緒に記録すると比較を誤りにくくなります。
消費者金融の利用者と平均借入額に関するよくある質問
消費者金融を使っている人は何人に一人ですか?
一つの公的統計だけで、消費者金融会社を現在使っている人の全国比率を正確に示すことは困難です。 JICCの2026年5月末統計には貸金業法対象情報の残高あり人数1,090.4万人が示されていますが、指定信用情報機関制度の対象には消費者金融だけでなくクレジット会社なども含まれます。 「何人に一人」という数字を見るときは、分子と分母、対象業者、調査時点を確かめてください。
消費者金融の平均借入額はいくらですか?
JICCの2026年5月末統計では、貸金業法対象情報の1人あたり残高は85.6万円です。 これは消費者金融だけの平均でも、借りてよい金額でもありません。 残高総額を残高がある人数で割った時点平均として読みます。
平均より借入額が少なければ安全ですか?
平均より少ないことだけでは、安全とは判断できません。 収入、生活費、金利、返済期間、ほかの返済額によって負担は変わります。 返済後に必要生活費を残せるか、完済日と利息総額を説明できるかで判断します。
複数の消費者金融から借りている人は珍しいですか?
JICCの2026年5月末統計では、残高がある人のうち借入件数1件が約62.6%、2件以上が公表人数からの概算で約37.3%です。 ただし、集計は貸金業法対象情報であり、消費者金融会社だけに限定されません。 既存返済のために新しく借りる状態なら、人数の多寡にかかわらず追加借入れを止め、相談窓口を含めて返済方法を見直します。
平均ではなく自分の完済までを数字にする
利用者数や平均残高は、市場の規模を知るには役立ちます。 しかし、自分が借りるべきかを決めるのは、平均との距離ではなく、返済後の生活と完済までの見通しです。
- 利用率は、対象業者、利用状態、分母によって変わる
- 2026年5月末のJICC統計では残高あり人数は1,090.4万人である
- 同統計の1人あたり残高85.6万円は推奨額ではない
- 借入件数1件の人は残高あり人数の約62.6%を占める
- 統計より先に、自分の毎月返済額、完済日、利息総額を確認する
こうした数字が現在の形になるまでには、高金利と多重債務を背景とした制度改正がありました。 消費者金融が歩んだ歴史では、金利規制と貸付残高の変化を時系列でたどれます。

